開戦前夜

開戦前夜

作:モウヤメルンダッ!!

ゲヘナ学園 HQ

イロハ「では前日ですし、簡単に作戦の最終確認をしましょう。」

私は淡々と、極秘ファイルから紙束を取り出す。

そして地図に手を置く。

今から説明するのは『バルバロッサ作戦』の内容だ。

可能な限り早く戦争を終わらせ、イブキ達との日常を取り戻すために、先生の言う説得策を切り捨ててまで私とマコト先輩が立案した。

イロハ「この作戦は装甲部隊の集中運用で敵の弱点ポイントを切り裂き、敵が体勢を立て直す間も無く制圧する『電撃戦』です。そのためあなた方装甲大隊の大隊長の腕が勝敗を左右するといっても等しい。期待していますよ。」

自分たちの責務を理解した3人の大隊長の顔が引き締まる。

そう。『砂糖』により人がどんどん引き寄せられるアビドス相手に長期戦を仕掛けるのは難しい。

そのため電撃的に倒すのが最適なのだ。

イロハ「・・・まず、開戦と同時に私の連隊とあなた方3個大隊はそれぞれ指定された合計4つの作戦ポイントから前進します。諜報部によると敵であるアビドス風紀委員会はハスミ副委員長を中心とした歩兵部隊なので、私たちなら難なく勝てるでしょう。側面防御は風紀委員会を中心とした歩兵部隊が担当するので、あなた達は前だけ向いててください。」

私は地図に置いてある白のルークを前に進め、通った道にポーンを置く。

イロハ「敵は私達の作戦や航空支援に対応できずに敗れ去ります。また小鳥遊ホシノや空崎ヒナといった『イレギュラー』は出てこれないでしょう。先生に対応しなければいけないので。」

先生達は開戦後、おそらくミレニアムとアビドスで会戦したタイミングでホシノ達を強襲するつもりだろう。それなら迂闊に私たちへの対応に出てこれない。

イロハ「開戦時に展開する敵の前線を食い破ったら、一気に北アビドス砂漠を突破。本拠地を占領。イブキを救出します。」

少しガバガバに見えるが、こうとしか言いようがない。

ちなみに、アビドス風紀委員会だけでなく浦和ハナコ親衛隊もいるらしいが、彼女達はおそらくトリニティとの前線に展開するだろう。トリニティの前線に食いついている間にまとめて包囲してしまえばいい。

イロハ「・・・次に開戦時の航空、海上支援についても説明します。開戦と同時にゲヘナの飛行場から2270機、ブリュッヒャーから20機のドローンが出撃し、私達の軍事作戦を支えます。敵にハッキング部隊がいるかはともかく、もしいたとしてもこれだけの数の機体を1度に乗っ取るのは多分不可能でしょう。海上支援については、万魔殿が保有する全海上戦力が出撃します。アドミラル・ヒッパーはNKウルトラ陸戦隊を伴いアビドスが保有する島嶼部に向かい、これを占領。彼らが持つ軍事基地を奪い取る。ブリュッヒャーはC&Cを護送しつつ私たちに随伴し、砲撃、航空攻撃、補給など各種支援を行う。また目標ポイントでC&Cを下ろし、破壊工作も支援する。プリンツ・オイゲンはアビドス近海に展開し、指定ルート以外を航行するアビドスに向かう輸送船を無差別、無制限に撃沈する。となっています。」

マコト先輩やその先代が強い海上戦力を持つトリニティに対抗するために、お船遊びと揶揄されながらも建造した3隻の船。

まさかアビドスへの戦いに役立つとは思ってもいなかった。マコト先輩が威信をかけて作っているビスマルクについてはデカすぎて本当に無用の長物だと思うが。

イロハ「最後に。何らかの原因でこの作戦を中止せざるを得ない場合、貴重な装甲部隊が包囲されることを防ぐために可及的速やかに撤退し、ブラウ作戦に切り替える必要があります。中止条件はこの紙に書いてある通りです。」

1.開戦時の攻撃が失敗

2.ミレニアム、トリニティ以外の他校がアビドス側で参戦

3.本拠地を攻略できないまま1週間が経過

4.小鳥遊ホシノ、空崎ヒナのいずれかの出現

5.3隻のうちいずれかの大破・撃沈

6.航空部隊に対するハッキング

7.シャーレがアビドスに情報を漏らした可能性がある

8.その他議長からの指令

イロハ「さて、説明は終わりです。早く部隊に戻り、最後の整備を始めてください。」

私はそう言うと、3人の大隊長を帰す。

・・・先生は今ごろどう思っているだろうか。

あの人は先生なので生徒である私を過度に恨むことはないだろうが、

あの人も1人の人間である。私達の判断に不満がないなんてことはないはずだ。

でも私はこれが正しい作戦だと考えている。

イブキと再び幸せな日々を過ごすにはそれを邪魔しかねない『砂糖』と、それに染まった連中は全て消し飛ばしても足りないくらいだ。

私はひとりになった空間で小さく息を吐く。

私も虎丸2号の整備をしなくては。

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用語集

HQ:司令部のこと

バルバロッサ作戦:アビドスの増え続ける人的資源を警戒したゲヘナが立案した軍事作戦。電撃的に本拠地含めた要所を占領し、ホシノたちを孤立させて降伏ないしは自決させることが最終目標。

元ネタはドイツ軍の対ソ作戦

ドローン:ミレニアムから供与された航空支援ドローン。制空も爆撃もできる、マルチロールな優れもの。ウタハ「私が作りました」

アドミラル・ヒッパー:マコトの先代の万魔殿議長が建造した重巡洋艦。アビドス戦争では島嶼部の占領支援など、そこそこ活躍する。

ブリュッヒャー:↑の姉妹艦。先代が建造。ドローンを載せられるように改造が施してある。アビドス戦争ではマコトの座乗艦としても活躍。

プリンツ・オイゲン:↑の姉妹艦。シロなつで初登場。マコトが風紀委員会の予算を流用せずに建造。アビドス戦争ではアビドスに向かう輸送船を片っ端から沈める迫真の活躍を見せる。(三大校以外の行方不明者2200人の大半はこの船

(の艦長の万魔殿モブとそもそもこれを立案したイロハ幕僚長と承認したマコト議長)

のせい)。

西アビドス海の海戦でたった一隻でアビドスの船団に立ち向かい勝利を掴み取る豪運艦。

これらの元ネタは全部ドイツの重巡洋艦。

ゲーム開発部が鋭意製作中のゲームにおそらくお出しされる。擬人化されて。

ブラウ作戦:バルバロッサ作戦が失敗した場合の予備プラン。北アビドス砂漠の砂糖生産地帯を占領し、アビドス生の士気を削ぐ作戦。

虎丸2号:持ってかれた虎丸の代わりにイロハに与えられた戦車

あとがき:ナグサの人の心を削り出す過程の箸休めで書きました。

開戦前夜のゲヘナ学園の様子です。ここから砂嵐にハマり電撃戦失敗になるのですが、イロハはやる気満々です。2度も助けられなかったイブキを助けなきゃいけないからね。

先生の提案を蹴ってまでこの作戦を立てて、挙句失敗し勇者PTも巻き添えで半壊したので本来なら大目玉もいいとこですが、先生は生徒に優しいしもういないのでセーフです。

これが成功し、ホシノたちトリオを始末したら電撃戦ENDが見られます。ゲヘナ学園の評価は上がって発言力は増えるし、ゲヘナバカマコトからゲヘナハシャマコトにアップグレードされた議長を見られますが先生との距離が微妙に広がり曇るイロハも拝めます。

おまけ

チアキ「これがヒナいいんちょの右腕、こっちは焼けこげてるけど左腕。あ、それは骨見えてるけど両足ですよ〜!」

マコト「キキキキキッ!ついに、ついにやったぞっ!!!・・・とは言っても、このような姿になろうとはな。・・・仮にも我がライバルの空崎ヒナが。まあいい。せめてもの情けだ。胴体部分と頭部の人形を作らせ、エンバーミングを急げ。葬儀はゲヘナ学園の名で執り行う」

チアキ「マコト先輩って意外と優しいんですね」

マコト「・・・我がライバルへの手向をやらずに勝ってどうする。ところで、残りの2人は・・・」

チアキ「服すらありませんでしたよ〜」

マコト「・・・跡形も残らずに逝ったか!そっちの方が都合もいいな!遺骸をめぐる争いも起こらない!キキッ!マコト様の、万魔殿の元での平和な世は約束されたぞ!!」

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